民法改正①
代表の岸下です。
勉強熱心はあなたなら、この内容はご存知かも知れません。
遡ること、2017年5月。明治時代から約120年も大幅な改定がなされなかった民法が、ついに改定されることになりました。
ある意味、時代に応じた改定がなされないことが、奇跡に近いかも知れませんね…。
この民法に、我々の賃貸業は守られてきました。
新しいものを取り入れるには、人はなかなか行動出来ないもの。
しかも、興味のある内容だと、前向きに捉えることは出来るのですが、その逆だと気乗りにもしないし、覚えられないですよ。
でも、ここは法治国家。法律により、善悪の判断下されます。事業を運営し、収益を得ている我々は法令遵守の義務を背負っております。
後々のトラブルを、ご自身が引き起こされないよう、改定ポイントを掴んでおきましょう。
今回の改定で、オーナー側に関わるポイントは大きく6点あります。
複数回に分けて掲載していきますね。
では、馴染みのある分野からいきましょう。
と言いつつ、この点はオーナーからご理解を頂けず、ずーっと愚痴を言われたことがありますが…。
①経年劣化部分での原状回復費の請求は不可
入居者が故意により、壁に穴を開けた。床を傷つけた。使い方が荒く、メーカーの設計基準値以上の力で使用し、洗面化粧台の一部を壊した。などは、もちろん、原状回復費の請求対象になります。これは、今まで通りです。
しかし例えば、入居年数が8年だったとして、退去時に通常使用の範疇で、壁紙のクロスが汚れていたとします。
この汚れの分は請求出来ないということです。
ここで「同じように汚れてるのに、なぜ請求出来ないねん?」と仰るオーナーは意外と多いですよ。
本来の原状回復工事の考え方は、借主側から見れば、長く住めば住むほど原状回復費用の負担が下がるというもの。
「昔は、こういう費用が貰えたのに、最近では貰えない。オーナー業って、損ばっかりやわ」という愚痴は、たくさん聞いてきましたよ(汗
消費者保護の観点では、至極当然の流れであっても、オーナー側には受入れがたいこともあります。
ですが、本当に情報が溢れているこの時代。インターネットやSNSを通じて、様々な声が上がり、見直しが図られ改定されていく。この流れは変えられないでしょうね。
中国では、このコロナの影響で仕事を失った労働者たちが、自分が住む物件の大家に対して、家賃の引き下げ・免除を求めました。大家側はそれを拒否。すると、その労働者たちは自分の住む物件を壊すなどの暴動を起こしました。
日本の民族性として、そういったことの可能性は少ないと思いますが、そういった立場の人間が情報発信し共感が生まれれば、議論の的になる可能性もあるでしょう。恐ろしい話ですが。
話が逸れましたが、であれば、現状を受入れ向き合っていきつつ、うまく運営していくしかありません。賢明に立ち回りましょう。
私からも、情報発信をしていきますので、お見逃しのないようにしてくださいね。
ちなみ、壁紙のクロスの減価償却は、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」により、6年となっております。これは全て一律ではなく、各部材により異なるので、これを機に確認しておきましょう。
で、これを基準に、実際に計算してみましょう。
入居に合わせて、クロスを張り替えたとします。そして、3年後に退去。その期間中にクロスを破いてしまったとします。
その時の計算式は、次のようになります。
(72(クロスの経過年数(耐用年数)である6年の月数)-36(居住期間3年の月数))÷72=50%
この場合、クロスの残存価値(減価償却が進み目減する)は、50%しか残っていません。
つまり、借主が負担するクロスの張替え費用は、仮にm当たり1,000円だと仮定した場合、借主がm当たり500円ということになります。
「はぁ?、張替えには、その倍の金額が掛るやん!」と言われても、こういうガイドラインが整備されております。大学によっては、学生さんがトラブルに巻き込まれないように、こういった国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」やその内容をレクチャーしているところもあります。
これ、新品に張替えしていると、話は計算し易いですよね。
(もちろん、提示を求められると、当時工事をした契約書や見積書、領収書などの証明が必要になります。)
でも、ありません?「次の方が決まってるから、今回は張替えせずに…」「今回は綺麗に使っているから、そのままいこう」ってお部屋。
ウチでも、場合によっては、それでいきましょうと提案します。
が、ここに注意点が。
先ほどの話は、「入居してから」の年数が問題なのではなく、「新品に張り替えてから」の年数です。この期間は、通算して考えるます。
と言うことは、クロスを3年前に張り替え、そのまま3年入居してくれた場合、その入居者が退去する時のクロスは、減価償却上は価値が無いものとなり実質的には過失に問えなくなりますので、ご注意ください。
今回は長くなってしまったので、続きは次回にまた…。